歴史

またやらかした?復元した中世の宗教画に「人面羊」降臨!

 スペインのおばあさんが教会の壁画を修復したところ、キリストが毛むくじゃらの猿そっくりに変わり果てた事件を覚えているだろうか?

 

 あまりにひどい仕上がりが、インターネットを通じて瞬く間に世界中に拡散。一目見ようと観光客が殺到したことで、地域経済の活性化を招くと同時に、元々それほど芸術的価値が高くなかった19世紀の絵が一躍有名になるきっかけとなったが、今度は、3年かけて復元された15世紀の傑作宗教画が見る人の心をザワつかせている。

『神秘の子羊』とは

 この絵は、ベルギーの古都ゲントの聖バーフ大聖堂に飾られている初期フランドル絵画の最高傑作『神秘の子羊(ゲントの祭壇画)』だ。15世紀の北ヨーロッパで最も重要な画家のひとりであるヤン・ファン・エイクが、兄のフーベルトの死後に制作を引き継いだ共同作品で、12枚のパネルから構成されていて、そのうち両端の8枚は三面鏡のように内側に折りたたむことができる。

 

 それぞれのパネルには、聖母マリアの受胎告知や洗礼者ヨハネなどの姿が描かれており、下段中央の最も大きなパネルには、イエス・キリストを示す神の子羊を中心に、天使や聖人などが登場するもの。

主役の羊が「人面」に?

 完成以来、北方ヨーロッパ絵画の最高傑作として、人類の至宝とまで呼ばれたこの作品は、パネルが裁断されて売り払われたり、第二次世界大戦下ではナチス・ドイツによって略奪されるなど、度重なる被害に遭ったために、表面のワニスが剥がれるなど損傷がひどく、2012年からは13年計画で大規模修繕作業を行っている。

 

 2016年から3年かかった今回の修復では、メインパネルを含む下段の5枚が完成したが、驚いたことに主役の子羊の顔がガラッと変わってしまった!元々は頭部の側面にあった両方の目が、人間のように正面に配置され、見る人を静かに見つめる表情に、「これじゃ猿イエスの再来じゃないか!」という声が上がっているという。

 しかし修復作業を担当したベルギー王立文化遺産研究所(KIK-IRPA)によると、人間化された羊の顔は、ファン・エイクがもともと描いた原画を忠実に復元したものだという。これまでに見ていた羊の顔は、思想家カルヴァンが唱えた16世紀の宗教改革の影響で、薄汚れた祭壇画をキレイにしようと当時の修復画家が上から手を加えたものだったという。

 

 上塗りを取り払ったベルギー王立研究所のチームや美術史家、神学者らは、「子羊は、人間の罪をつぐなうために生贄の役割を果たしたキリストを象徴している存在ですから、単なる動物を超えて、絵を見る人に強い印象を与える表情を描いたのではないか」と指摘し、今回の修復によって本来の表現が再発見されたことを喜んでいるという。

 

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