事故

高齢ドライバー「認知機能検査」導入後 かえって死傷事故が増加 筑波大が分析

 高齢ドライバーによる暴走事故が社会問題となるなか、筑波大学の研究グループは29日、運転免許更新時に認知機能の検査を導入した2009年以降でも、事故が減っていないばかりか、「交通弱者」と言われる75歳以上が乗る自転車や歩行者の間でも死傷率が増加していることを明らかにした。

 

 高齢ドライバーが高速道路を逆走したり、アクセルとブレーキを踏み間違えたことが原因で起こる事故があいつぐなか、2018年の統計では、全年齢の交通死傷者数に占める75歳以上の割合は6.3%にのぼった。

検査導入した他の先進国でも

 道路交通法の改正で、2009年6月からは75歳以上のドライバーが運転免許を更新する際には、認知機能検査を受けるよう義務付けられ、機能低下と判定が出された場合に交通違反が発覚したときには、認知症の専門医の診察を受けることになった(認知症と診断されると免許停止か取り消しになる)。

 

 それでも事故がなかなか減らないことから、2017年3月からは、認知機能低下のおそれがあると判定された場合は、交通違反の有無にかかわらず、免許更新前に臨時適性検査を受けるか、医師の診断書の提出が義務付けられるようになった。

 

 筑波大の市川政雄教授らのグループは、交通事故総合分析センターの協力を得て、2005年1月から2016年12月までの全国の交通事故データを分析し、道路交通法の改正や運用変更後の影響を調べた。

 

 その結果、認知機能検査の導入後、75歳以上の交通弱者の死傷率は、70〜74歳に比べて増加していることが判明。2009年6月から2012年5月までの3年間では、75〜79歳と80〜84歳の女性で、それぞれ7.5%と9.3%増えていた。さらに75歳以上の免許の有効期限が切れる3年後の2012年6月以降には、80歳以上の男性と、85歳以上の女性でも増加が見られた。

 

 研究グループは「2009年に導入した認知機能検査は、高齢ドライバーの事故を減らすという当初の目的を果たしていないばかりか、高齢の交通弱者が事故に遭うという想定外の副作用をもたらした」と指摘。背景には、検査導入後に運転を止めたり、控えるようになった高齢ドライバーが、今度は自転車や歩行で移動するようになったことが考えられるという。

 

 運転免許時の認知機能検査は、デンマークやカナダのオンタリオ州、台湾などでも導入されているが、このうちデンマークでは、検査導入後も事故は減少せず、かえって高齢歩行者や自転車の死傷事故が増えた可能性が指摘されている。市川教授は「2017年3月の運用変更後の影響についても検討しなければならない」と話している。

 あなたにオススメの記事

 編集部からのオススメ記事