防災歳時記10月18日昭和の恐怖 フラフープとチクロ
今から55年前、1958年(昭和33年)の今日10月18日、都内のデパートで「フラフープ」が一斉に売り出された。
フラフープは一瞬にして爆発的なブームになった。
「美容と健康に良い」と評判で、映画もできたし、レコードも発売された。
しかし、フラフープにより「胃に穴があいた」という事故が発生し、さらに千葉県で少年3人がフラフープで腸捻転など内臓に障害を起こしたと報告され、爆発的ブームは1ヶ月あまりで終息した。
フラフープをやりたがる子どもたちも、親から「フラフープをやり過ぎると腸に穴があくよ!」とおどかされ、意気地なく怖じ気づいた。
当然ながら後年、フラフープと胃穿孔や腸捻転の科学的因果関係は否定されている。
そもそもフラフープは古代ギリシャの時代から「ダイエット器具」として使われていたらしいから、健康にも一定の効果があったのだろう。
昭和の時代に同じような「憂き目」にあったのが、人工甘味料「チクロ(サイクラミン酸ナトリウム)」だ。
米食品医薬品局(FDA)がチクロに発がん性・催奇形性があると指摘したことから、1969年(昭和42年)、日米では使用禁止となった。
当時デパートの催事場などでは、しきりに「チクロ展」なるものが開かれ、チクロの恐怖をあおっていた。
時は「公害」が大きな社会問題としてクローズアップされている時代でもあり、「科学の恐怖」に多くの人が取り憑かれていた。
しかし、その後チクロの危険性は一応否定され、EU、カナダ、中国など世界55カ国以上で現在も使用されている。
ことほどさように、その時々の「危ない・安全」は「まゆつば」なことも少なくない。
例えば「マーガリン」。
「植物性脂肪だから動物性脂肪のバターより健康的」と思われていたが、マーガリンに含まれるトランス脂肪酸が心臓疾患などのリスクになりうると指摘され、昨今はトランス脂肪酸の量を制限する国もある。
しかしこれも何十年か先にはどういう結論になるのだろう。
ちなみに日本マーガリン工業会は、要約すれば「日本人のトランス脂肪酸摂取量は少なく、かつ同物質の影響を軽減するリノール酸の摂取量が多いので、健康リスクは低減されている。いずれにせよ過剰摂取はよくないので、今後とも努力していきます」との微妙な見解を平成19年に発表している。
何しろ、人の知恵には限界がある。
「気をつけなくていい」とは言わないが、「役所が危ないと言った」、「マスコミが危ないと騒いでいる」などの類いは、常に正しいとも限らないのが、歴史の現実だ。