医療技術

心肺停止後の蘇生には水素ガス吸入が有効 ラットで実証

 心肺停止状態の患者に蘇生措置を使って心拍を再開させた後に水素ガスを吸入させると、生存率や脳機能低下が改善されることを、慶応大学の研究グループがラットの実験で発見した。救急医療現場における新しい治療法として期待が寄せられている。

 

 消防庁などによると、事故や持病などにより病院以外で起こる心肺停止は、全国で毎年約13万件近くに上る。「AED(自動体外式除細動器)」が普及して、心肺蘇生に対する意識が一般にも高まったが、蘇生できても、脳や心臓に重い後遺症が残るケースが多発。「心停止後症候群」と呼ばれ、いったん血液の流れが遮断されていた臓器に再び血液が流れると、大量の活性酸素が発生するのが障害の原因とされ、以前から救急現場での課題となっていた。

 

 慶應大学の林田敬特任助教らのグループはこれまでも、脳梗塞や心筋梗塞に対して、水素ガスを吸入させながら詰まった血管を広げて血流を再開すると、梗塞が軽症化することを動物実験で明らかにしてきた。今回は救急医療の現場の状況に近い条件を作り出し、6分間の心肺停止状態の後に、胸の圧迫や人工呼吸を試した後、水素ガスを吸入させたラットとそうでないラットについて比較観察した。

 

 その結果、蘇生から7日間経過して、水素ガスを吸入させたラットでは、脳の機能や生存率が何もしなかったラットと比べて2倍近く改善していることがわかった。さらに行動面では、蘇生後何もしなかったラットは脳神経細胞の働きや認知機能、行動量が低下したのに対し、水素ガスを吸入させたラットではそれらの低下が抑制されたという。

 

 水素ガスの濃度は1.3パーセントで爆発の危険性はなく、研究グループでは「命が助かって、社会復帰率を上げるために、脳を守る方法が待望されている。今後は、薬事法承認取得をめざして、臨床治験を進めていきたい」と話している。

 

 なおこの論文は、米医学誌「Circulation」電子版に掲載された。

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