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メンタルクリニックに学ぶ

  2011年3月11日に発生した東日本大震災の傷跡もまだ癒えず、その後も台風などでたびたび被害が発生している「災害大国」の日本。理不尽に被害をもたらす災害に対して、被災者は金銭的な問題や体のダメージ以外に「心へのダメージ」を受けてしまうこともある。
  本連載では、体と心の両面をケアするカウンセラー 「さくら坂クリニック SophyAnce」院長・武藤治人先生に災害とメンタルヘルスの関係や、実際の治療例、取るべき心構え、ストレスの発散法などをを伺っていく。

第5回 震災離婚ってご存じですか?

防災を通してコミュニケーション。夫婦の絆を深める。

 今回のテーマは“家族のコミュニケーションの重要さ”。これをしっかり意識しておかないと、生き残ったとしても夫婦関係にひびが入るような恐ろしい二次災害が発生する可能性も……。  


 前回、人間は我慢し続けると、より大きなストレスがたまるというお話をさせていただきました。例えるなら、まるでガソリンメーターがエンプティを示していても、アクセルを踏み続ける状態と同じ……。これは精神的疲労から「心のエネルギー」みたいなものがカラっぽなのに、「頑張らなくては」と言う気持ちだけが空回りしている危険な状況です。 これが続くとどうなるのでしょう。個人として憔悴してしまうばかりか、そうしたネガティブな感覚によって夫婦や家族の関係にひびが入り、最悪、離婚になりかねません。


 実際に有事の後は、離婚が増えるというデータがあります。インターネットなどの統計では、「震災後に離婚を考えたことがある」という主婦は15%という数字もありました。また「震災離婚」という単語も生まれ、一時期ですがグーグルの急上昇ワードにも登ったほどです。ちなみに震災離婚とは、地震や災害への価値観の違いから離婚に向かうというものなので、何も被災者だけの問題ではありません。「家族に内緒で非常食を勝手に食べてしまった」「震災直後のテレビ番組がつまらないなど文句を言った……」。誰にでも震災離婚の可能性はあるのです。


 しかしその半面で、地震によってより絆を深めた夫婦や家族もおり、そういった家庭は、普段からコミュニケーションを大事にしているように見受けられました。当たり前のことに聞こえるかもしれませんが、家族とのコミュニケーションを意識して生活しているか、しないかで、いざという時の状況は大きく変わるのです。


 では、実際になにができるのでしょうか。例えば、日ごろから家族で防災について話し合ってみては。有事の際に夫婦や家族がバラバラにならないよう、事前に待ち合わせ場所や避難場所を決めおいてもいいでしょう。どうしてもバラバラになってしまったときは家のポストを使って手紙で連絡を取り合おうなど、あらゆるシチュエーションを話してみることです。そして非常時に備えて何を用意しておくか話し合っておくこともいいですね。防災から生まれるコミュニケーションで、いざという時に慌てなくてすむかもしれませんし、家族としての絆も深まるかもしれません。 

“機能不全家族”になってはならない

 私は常に思っていることがあります。それは“家族”が最小単位だということ。そして家族が集まって区市町村を形成し、それが都道府県になって、国になるということです。その最小単位にほころびがあると、強いては国全体がほころんでいくと思うのです。


 昔は、両親はもちろん、おじいちゃん、おばあちゃんから様々な知恵を授かっていたように思います。「こういうことが起こったら、あそこに逃げろ」といった、その土地に代々伝わる話に耳を傾けて災害に備えていました。 余談ですが、青森県から宮城県にいたる約200の古い石碑には、「ここより下に家を建てるな」などの文字が刻まれており、実際に津波発生時には石碑より下の地域は大きな被害に遭ったといいます。先人の知恵は偉大かもしれません。


 スマートフォンに携帯電話、インターネット……便利な世の中になりました。家族間のコミュニケーションも、メールで済ませている、なんてことはないですか? やはり夫婦や家族は、直接会って話したり、過ごしたりする時間を作ることが大事です。普段からコミュニケーションを大切にし、“機能不全家族”にならないことが、防災でも非常に大事だと思います。 

さくら坂クリニックSophyAnce

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